内発的動機づけと外発的動機づけとは
動機づけ(モチベーション)とは、行動を引き起こし、持続させる一連の働きのこと。
わかりやすくいうと、動機づけ(モチベーション)は「やる気」や「意欲」である。
内発的動機づけとは、内部から生じる動因(欲求)によって、動機づけ(モチベーション)を高める方法。
動因(欲求)とは、内部から行動を引き起こす要因のこと。この場合、好奇心や探究心などが当てはまる。
たとえていえば、内発的動機づけは「やりがい」や「好きこそ物の上手なれ」である。
アメリカのエドワード・デシらによれば、自己決定感や有能感などが内発的動機づけにつながる。
外発的動機づけとは、外部から誘因(インセンティブ)となる報酬を与えて、動機づけ(モチベーション)を高める方法。
誘因(インセンティブ)とは、外部から行動を引き起こす要因のこと。この場合、報酬やトークン(引換券)などが当てはまる。
たとえていえば、外発的動機づけは「アメとムチ」である。
行動主義(学習理論)におけるオペラント条件づけ・道具的条件づけと似た考え方である。
内発的動機づけと外発的動機づけの違い
内発的動機づけでは、過程(プロセス)を楽しむことができる。そのため、行動すること自体がご褒美になる。
自分が決めた目標に対して、時間を忘れて夢中になりやすい。
外発的動機づけでは、結果(ご褒美)を求めることになる。そのため、行動のあとのご褒美に目が奪われやすい。
環境や他者が決めた目標に対して、早く終わらせることばかり考えてしまう。
内発的動機づけによって引き起こされる行動は、質が高く、創造性にあふれる。
質やクリエイティビティの求められる作業、イノベーションの創出には、内発的動機づけがいいだろう。
外発的動機づけによって引き起こされる行動は、質が悪いが、効率がよい。
質よりも効率の求められる作業、マニュアルのある単純作業には、外発的動機づけがいいだろう。
内発的動機づけは、時間はかかるが、持続しやすい。
外発的動機づけは、即効性は高いが、長続きしない。
自律型人間の育成には、内発的動機づけがいいだろう。ただし、叱らず任せる度量が必要となる。
従順な人間の育成には、外発的動機づけがいいだろう。ただし、必要な報酬がどんどん増えていく。
アンダーマイニング効果(外発的動機づけは、内発的動機づけを阻害する)
アメリカのマーク・レッパーらは、アンダーマイニング効果についての実験を行った。
絵を描くのが好きな内発的動機づけのある子供たちに、絵を描けば報酬(誘因)を与えると説明した。(外発的動機づけ)
すると、報酬をもらえない子供たちに比べて、多くの絵を書いたが、内容は雑なものになっていった。
しかも、徐々に内発的動機づけも弱められ、自発的に絵を描くことが減っていった。
このように、内発的動機づけがすでにある場合は、外発的動機づけ(誘因)は逆効果となりやすい。
ただし、内発的動機づけがまだ弱い場合は、外発的動機づけ(誘因)を行うことも必要である。
ロウソク問題(外発的動機づけは、創造性を妨げる)
ドイツのカール・ドゥンカーによって行われたロウソク問題を改良して、カナダのサム・グラックスバーグが内発的動機づけと外発的動機づけについて調べている。
「ロウソク」1本、「マッチ」数本と、「押しピン(画鋲)」数個が「箱」に入れられてある。
「部屋の壁にロウソクを立てる」には、どうしたらいいだろうか。
この問題に対して、被験者を2つに分け、それぞれ以下のように説明して実験を行なった。
- グループA「問題を解くのにかかった平均時間を測定します」
- グループB「より早く問題を解けた人には、報酬を払います」
この結果、グループBよりもグループAのほうが、早く問題を解くことができた。
これは、グループBのほうが報酬(誘因)を与えられたせいで、頑張りすぎてしまったため、かえって発想の転換が難しくなったのである。
このように、内発的動機づけと違って、外発的動機づけはイノベーションの創出やクリエイティビティの妨げとなることがある。(イノベーションのジレンマ)
ロウソク問題の答えについては、以下をご覧ください。
接近-接近の葛藤(誘因が多ければいいとは限らない)
2つの目標(誘因)が、ほぼ同程度の魅力を持つ場合に、どちらにしようか迷って、行動を起こせなくなる。
これを、接近-接近の葛藤(接近-接近型)と呼ぶ。
このように、目標(誘因)が多ければ多いほどいい、とは限らないわけである。
参考
関連する心理学用語
自己決定理論
人間性心理学
闘争・逃走反応(fight-or-flight response)
問題解決
創造性
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