対人関係・社会リズム療法(IPSRT)とは
主に双極性障害・双極症(躁うつ病)に対して用いられる、エビデンスにもとづく心理療法です。
エレン・フランクによって、対人関係療法と社会リズム療法を組み合わて開発されました。
最初は、双極性障害についての疾病教育から始まります。
その1つは薬物療法の重要性(特にⅠ型)で、1つは生活リズムの重要性です。
これは、双極性障害で投薬拒否や生活リズムの乱れ(破綻)がよく見られるためです。
躁状態の万能感を”本来の自分”であると捉えて、病気を否認してしまいますが、そのあと抑うつ状態になることを繰り返します。
社会リズム療法としては、活動記録でセルフモニタリングすることが推奨されています。
その記入形式をSRM(ソーシャルリズム・メトリック)と呼び、以下のような項目があります。
- 起床時間(布団から起き上がった時間)
- 最初に他人と接した時間(対面、電話、オンラインなど)
- 始業時間(仕事、学校、家事、作業など)
- 夕食の時間
- 就寝時間(布団に入った時間)
- 一日の気分(-5〜+5)
対人関係療法としては、4つの問題領域に新たな問題領域(健康な自己の喪失という悲哀)が加えられています。
病気であることを受け入れ、家族などの対人関係に働きかけていくことを学んでいきます。
- 悲哀(死による喪失)
- 健康な自己の喪失という悲哀(病による喪失)
- 対人関係上の役割をめぐる不和(不一致)
- 役割の変化
- 対人関係の欠如
自分は病気ではないと感じているのですね。
病気だとわかると苦しさを感じる人が多いのですが、苦しみを感じてはいませんか?
カウンセリングについて調べたのは、前向きな思いがあったからではないでしょうか?
対人関係の中でも、特に重要な家族、恋人、親友などを重要な他者と呼びます。
重要ではない他者のことばかり考えてしまう八方美人は現実的ではありません。(相性が悪い人は必ずいます。)
そのため、重要な他者を分けて考えることが重要です。
罪悪感を感じるのは、病気のせいであって、ご自身のせいではありませんよ。
お話を伺っていると、ご家族との関係性から症状が悪化しているように見えます。
ご家族とどのようにコミュニケーションしていくか、話し合ってみませんか?
初回エピソードから双極性障害と診断されるまでには、平均して10年ほどの時間を要しているといわれます。
これは、初回エピソードが抑うつエピソードであることが多く、うつ病や季節性うつ病(冬季うつ病)と誤診されることが多いことが影響していると考えられます。
そのほかにも、境界性パーソナリティ障害や注意欠陥・多動性障害(ADHD)との識別、最近では複雑性PTSD・発達性トラウマ障害との識別も問題となっています。
また、アルコール依存症・乱用や摂食障害(拒食症、過食症)などが併発していることも多いです。
そのため、身体症状の強い場合などは、別途トラウマケアやマインドフルネス(第三世代の認知行動療法)などを取り入れることも検討します。
参考
関連する心理学用語
双極性障害
うつ病
季節性うつ病(冬季うつ病)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
アルコール依存症
摂食障害
自律神経失調症
S-O-R理論
第三世代の認知行動療法
マインドフルネス
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