自律神経系とは
内臓の働きを調節して、身体の機能を整える機能を持つ末梢神経のこと。
意識によってコントロールできず、自律的に働く神経系だとされる。
「不随意神経系」とも呼ぶ。
以下は、人体の神経系を分類したもの。
- 神経系
- 中枢神経系
- 脳(大脳新皮質・大脳辺縁系・脳幹)
- 脊髄
- 末梢神経系
- 体性神経系(感覚神経・運動神経)
- 自律神経系(交感神経系・副交感神経系)
- 中枢神経系
神経系(自律神経系)は、内分泌系(ホルモン)、免疫系、細菌叢などと共にホメオスタシス(恒常性)を維持している。
例えば、交感神経系は副腎(腎臓の上にある臓器)に影響を及ぼし、アドレナリン・ノルアドレナリンなどのホルモン(内分泌系)によって全身に広く、長く働きかけることができる。(交感神経-副腎系)
ストレスやトラウマなどにより、自律神経系のバランスが崩れた状態を自律神経失調症と呼び、ホメオスタシス(恒常性)が維持できなくなる。
交感神経系-副交感神経系の2分類
自律神経系を2つに分類する従来の考え方。
内臓は交感神経系と副交感神経系によって二重支配されており、反対に作用することで内臓機能が調節される。
以下の表は、交感神経系と副交感神経系の働きをまとめたもの。
ここでは、ホメオスタシス(恒常性)を提唱したウォルター・B・キャノンの記述を参考にしている。
分類 | 機能 | 交感神経系 | 副交感神経系 | 備考 |
---|---|---|---|---|
目 | 瞳孔 | 拡大 | 縮小 | |
目 | 涙 | 減少 | 増加 | ドライアイ(交感神経系) 涙目(副交感神経系) |
肺 | 呼吸 | 吸う(吸気) | 吐く(呼気) | 自分の意志でコントロールできる |
気管支 | 収縮 | 広がる | 狭まる | 喘息(副交感神経系) |
心臓 | 心拍(鼓動) | 増加 | 減少 | 動悸(交感神経系) |
血液 | 血圧 | 上昇 | 低下 | 頭に血が上る(交感神経系) 血の気が引く(副交感神経系) |
血液 | 血糖 | 上昇 | 低下 | 肝臓・筋肉でグリコーゲンを分解 |
筋肉 | 体温 | 上昇 | 低下 | |
筋肉 | 収縮 | 増加 | 減少 | 火事場の馬鹿力(交感神経系) 窮鼠猫を噛む(交感神経系) |
皮膚 | 発汗 | 増加 | ー | 手に汗握る(交感神経系) |
皮膚 | 収縮 | 増加(鳥肌) | ー | 鳥肌が立つ(交感神経系) |
口 唾液 | 分泌(消化) | 減少(ネバネバ) (喉が乾く) | 増加(サラサラ) (喉が潤う) | |
消化器官 | 分泌(消化) | 減少(消化抑制) | 増加(消化促進) | 食欲不振(交感神経系) 食後眠くなる(副交感神経系) |
消化器官 | 収縮(消化) | 減少(消化抑制) | 増加(消化促進) | 食欲不振(交感神経系) 食後眠くなる(副交感神経系) |
直腸 | 収縮 | 便秘傾向 | 下痢傾向 | |
ホルモン | 作動 | アドレナリン ノルアドレナリン (副腎髄質ホルモン) | アセチルコリン |
ポリヴェーガル理論の3分類
自律神経系を3つに分類する(迷走神経系を2つに分類する)新しい考え方。
アメリカのスティーブン・ポージェス(ステファン・ポージェス)がポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)の中で提唱した。
ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)では、自律神経系を交感神経系・背側迷走神経複合体・腹側迷走神経複合体の3つに分類している。
背側迷走神経複合体(背側迷走神経系)は、無髄の迷走神経とそれに連動する神経系の集まり(複合体)のことを指し、副交感神経系が含まれる。
腹側迷走神経複合体(腹側迷走神経系)は、有髄の迷走神経とそれに連動する神経系の集まり(複合体)のことを指し、副交感神経系が含まれる。
以下の図は、有髄の迷走神経(腹側迷走神経)のイメージ。
Myelin Sheathが有髄の部分であり、これによって無髄の迷走神経(背側迷走神経)と比べて、神経伝達速度が飛躍的に向上している。
アントニオ・ダマシオは、無髄(ミエリン化されていない)神経繊維こそが、感情・情動の構築に不可欠だとしている。
自律神経失調症
自律神経失調症には、以下のような症状が現れる。
- 頭部:円形脱毛症
- 心臓:不整脈、頻脈、心不全
- 血液:血行障害、内出血
- 消化器官:消化不良、胃腸障害、胃潰瘍、十二指腸潰瘍
- 免疫機能:感染症、がん
- 精神障害:食欲不振、摂食障害、うつ病
自律神経系を整える(運動やマインドフルネス)
自律神経系は、一部を除き自分の意志でコントロールすることが難しく、直接内臓などを動かしたりすることはできない。
そのため、自律神経系を整えるためには、自分の意志で動かせる筋肉を使って体を動かしたり、自分の意志で持続できる注意力を使ってマインドフルネス瞑想を行うことなど、間接的に働きかけることが必要となる。
なお、呼吸は特殊で、自律神経系だけでなく、体性神経系でもコントロールできるため、自分の意志で呼吸を整えることができる。運動やマインドフルネスで呼吸が重要な位置付けになっている理由である。
マインドフルネスは、身体感覚などに気づく「注意のトレーニング」である。
ここでいう身体感覚とは、五感などの外受容感覚ではなく、内臓感覚などの内受容感覚のことである。
参考
関連する心理学用語
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
自律神経失調症
引きこもり
闘争・逃走反応(fight-or-flight response)
新行動主義
S-O-R理論
第三世代の認知行動療法
マインドフルネス
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