孵化(ふか)効果とは
問題から離れて温める時間をとることで、まったく新しい創造的な問題解決(アイデア)を着想しやすくなること。
問題に直接取り組んでいるときではなく、休息や散歩などで息抜き・気分転換しているときに創造性を発揮しやすい。
真面目に考えすぎても、煮詰まってしまうわけである。
創造的思考による問題解決では、以下のようなプロセスが行われる。
- 準備の段階・・・一般的な問題解決で失敗を繰り返す
- 温めの段階・・・休息中に無意識の中で温める
- ひらめきの段階・・・ハッとするようなひらめきが訪れる
- 検証の段階・・・新たな問題解決が正しいかを検証する
この流れからわかる通り、実際に問題解決しようとしている「準備の段階」ではなく、休息や散歩をしている「温めの段階」の後に、突然ひらめきが起こる。
このように、「温めの段階」の後に「ひらめきの段階」が来ることから、卵を温めることにかけて、孵化効果と呼ぶ。
ただし、あくまで一生懸命に考える「準備の段階」が必要であることには変わりない。
これは、「守破離」とも通じるものがあるだろう。
これは、収束的思考から発散的思考への切り替えである。
機能的固着などのように、人は収束的思考から発散的思考への切り替えが困難なところがある。
安いネックレス問題
「温めの段階」の後に「ひらめきの段階」が来ることは、安いネックレス問題の実験などで示されている。
以下の図の左側(Given state)のように、3個の輪がつながった鎖(Chain)が4つ与えられる。
右側(Goal state)の完成形のように、ネックレスを作ることがゴールである。
1個の輪を開くのに2セント、閉じるのに3セントかかるが、合計15セントしか使うことができない。
さて、どうすればできるだろうか。
この問題では、連続して30分考えたグループよりも、休憩を挟んで30分考えたグループのほうが正答率が高くなった。
安いネックレス問題の答えについては、以下をご覧ください。
孵化効果とイノベーション
孵化効果は、収束的思考から発散的思考に切り替えることで、創造的思考(発想の転換)を発揮しようとするものである。
そのため、孵化効果はイノベーションの創出やクリエイティビティに必要なものと言える。
逆に、真面目に頑張りすぎることで、イノベーションのジレンマとなるわけである。
例えば、Google社では、20%を担当業務以外に使わないといけないという「20%ルール」が存在するとされている。
マインドワンダリング
孵化効果には、心ここにあらずのマインドワンダリングの状態が必要だと言うことができる。
人は、休息や散歩をしながらも、絶えず思考を働かせているわけである。
一方で、心の健康のためには、今ここに気づくマインドフルネスが重要だとされる。
創造的思考を発展させてきた人間は、創造性とひきかえに、心ここにあらずの状態になる運命を背負っている。
心ここにあらずの状態では、自動思考や強迫観念などにつながる可能性がある。
そのため、問題解決思考を休ませるためのマインドフルネスが必要とされるようになったのである。
参考
関連する心理学用語
認知心理学
自動思考
問題解決
創造性
第三世代の認知行動療法
マインドフルネス
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