首を引っ込めたカメ(甲羅に閉じこもったカメ)とは
防衛反応の一種である凍結反応・凍りつき反応(freeze response)や引きこもりの説明に用いられるメタファー(例え話)。
カメは天敵の襲来などの生命の危機に瀕して、首と手足を甲羅に引っ込めて不動状態になる。これは、無理に可動して闘争・逃走反応(fight-or-flight response)を起こしてしまうと、甲羅から出した首や手足を傷つけられてしまう可能性が高いため、生命維持のために合理的な反応である。
積極的に問題を解決することはできないが、時間とともに天敵は諦めてどこかに行ってしまうはずだから、それまでじっと待った方がいい。
ただし、実際に安全な状態になったにも関わらず、いつまでも首を引っ込めていると、いずれ飢えるなどして生きていけなくなる。
以下の図は、首を引っ込めたカメ(甲羅に閉じこもったカメ)のメタファーを説明する際に用いる画像の例。
この画像を見て、カメは危機に瀕していると考えるのか、カメはもう安全だと考えるのかが認知の違いである。
首を出してみないと危険は察知できないし、危険だったらまた首を引っ込めればいいと考えることができれば、無力感から抜け出して自分の殻を破ることができるかもしれない。
トラウマケアなどに用いられるポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)では、自律神経系の一種である背側迷走神経複合体(背側迷走神経系)が凍結反応・凍りつき反応(freeze response)を司るとする。
同じく自律神経系の一種である腹側迷走神経複合体が、背側迷走神経複合体を調節することで、ストレスに対する凍結反応を静め、解離や仮死(シャットダウン)、フラッシュバックなどが起こることを防止する。
そのためには、身体的安全性や心理的安全性の感じられる環境(居場所・安全基地)を確保した上で、安全であることを身体感覚(内受容感覚)で感じ取れるように支援する。
ここで注意したいのは、安全だと感じられる甲羅や家などの居場所・安全基地がない限り、誰も外に目を向けられないということである。
凍結反応・凍りつき反応(freeze response)のメタファー(例え話)としては、猫にくわえられたネズミも用いられる。
参考
関連する心理学用語
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
闘争・逃走反応(fight-or-flight response)
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