自己への向き換え(自虐)とは
相手に向けている感情(怒りなど)を、自分自身に向けること。
「衝動の自己への向き変え」、「攻撃性の自己への向き変え」、「自分自身への向き変え」、「自己への反転」などとも呼ぶ。
精神分析において、欲求不満(フラストレーション)や葛藤に対処しようとする防衛機制(適応機制)の一種である。
自己への向き換え(自虐)の例
例えば、他人への怒りを、自分に向き換える。
これは、自虐的であり、自責感から抑うつに陥る恐れもある。
例えば、親への怒りを向けると、自分の身が危険なため、自分に怒りの矛先を向ける。
これは、親に虐待された子どもなどに見られることである。
例えば、他者への愛が、自己愛へと変わる。
これは、自己愛性パーソナリティ障害、いわゆるナルシストに見られる。
そのほかの防衛機制
以下は、代表的な防衛機制の一覧。
分類 | 防衛機制 | 内容 | 備考 |
---|---|---|---|
精神病的防衛 | 否認 | 受け入れがたい現実を、受け入れようとしない 例)重い病気になったことを認めない | 死の受容過程 否認の病 →投影 |
精神病的防衛 | 投影(投射) | 受け入れがたい自分の感情を、他人に押し付ける 例)自分が嫌っているのに、他人が自分を嫌っていると思い込む | 妄想(パラノイア) ←否認 ↔︎取り入れ |
未熟な防衛 | 退行 | 受け入れがたい感情から、幼少期の精神状態に逆戻りする 例)赤ちゃん返りで、好きな人(親)の気を引く | 子ども返り 赤ちゃん返り |
未熟な防衛 | 取り入れ(摂取) | 他人の属性(感情、価値観など)を自分のものにする 例)好きな人の行動を模倣する | うつ病(喪失体験) →同一視 ↔︎投影 |
神経症的防衛 | 抑圧 | 受け入れがたい感情を、意識から無意識の世界に押しやる 例)嫌なことを忘れる | ヒステリー ↔︎解離 →反動形成 →抑制 |
神経症的防衛 | 反動形成 | 受け入れがたい感情(本心)とは、反対に振る舞う 例)嫌いな人に丁寧に接する、好きな人に素っ気なく振る舞う | 強迫神経症 ←抑圧 →転倒 |
神経症的防衛 | 隔離(分離) | 受け入れがたい感情を、思考・行為から切り離す 例)親しい人が亡くなっても、涙が出てこない | 強迫神経症 →解離 →打ち消し |
神経症的防衛 | 打ち消し(取り消し) | 過去の思考・行為によって生じる感情を、反対の思考・行為で打ち消す 例)人を非難したあと、機嫌を取る | 強迫神経症 ←隔離 |
神経症的防衛 | 解離 | 受け入れがたい体験を、正常な意識から切り離す 例)つらい記憶をなくす(フラッシュバックすることも) | ヒステリー ←隔離(分離) ↔︎抑圧 |
神経症的防衛 | 置き換え | 受け入れがたい感情を、別の対象に向ける 例)仕事のストレスを家庭で発散する | 八つ当たり |
神経症的防衛 | 合理化 | 受け入れがたい感情を、もっともらしい理由をつけて納得する 例)手の届かない目標を、自分に合ってないと思い込む | 言い訳 すっぱい葡萄 |
ー | 自己への向き換え (自虐) | 相手に向けている感情を、自分自身に向ける 例)他人への怒りを、自分に向き換える | |
ー | 転倒(逆転) | 受け入れがたい感情と、反対の感情に変わる 例)好きな人とうまくいかないと、嫌いになる | ←反動形成 |
成熟した防衛 | 昇華 | 反社会的行動を、社会的行動に転換する 例)嫌いな人(親)への反抗心から、勉強や仕事を頑張る | ←補償 |
成熟した防衛 | 同一視(同一化) | 受け入れがたい感情から、他人に自分を重ね合わせる 例)好きな人と同じ服装をする | ←取り入れ |
参考
関連する心理学用語
自己愛性パーソナリティ障害
精神分析
認知バイアス
コメント