錯視(目の錯覚)とは
視覚において、実際のものとは異なるものとして知覚されること。
人は、網膜像をそのまま知覚しているのではなく、脳内で解釈・推論などによって修正されている。
物理的には正しいデザインでも、錯視によっておかしく見えてしまうことがあるため、錯視を考慮してデザインすることもある。
錯視には、形の錯視(幾何学的錯視)、色の錯視、運動の錯視などがある。
形の錯視(幾何学的錯視)
大きさ、方向、湾曲などの形に関わる錯視である。
以下は、形の錯視(幾何学的錯視)の例。
ミュラー・リヤー錯視(大きさの錯視)
線の両端に矢印(<ー>)を描くと、線が短く見える。
線の両端に矢印の逆向き(>ー<)を描くと、線が長く見える。
実際には、どちらも同じ長さの線である。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/b676c69b3539eafb7e34ecd529900361.jpg)
詳しい説明(解説)は、以下をご覧ください。
ポンゾ錯視(大きさの錯視)
三角形のような斜めの線があるとき、横向きの二つの線は上に行くほど長く見える。
実際には、どちらも同じ長さの線である。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Rectas_paralelas.jpg)
詳しい説明(解説)は、以下をご覧ください。
ザンダー錯視(大きさの錯視)
大きさの異なる平行四辺形において、対角線の長さが違って見える。
左側の平行四辺形の対角線のほうが、右側の平行四辺形の対角線より長く見える。
実際には、どちらも同じ長さの線である。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Sander_Illusion.jpg)
ツェルナー錯視(方向の錯視)
長い線はすべて並行であるが、斜めに描かれた短い線によって、実際よりも傾いているように見える。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/62684e153f80a0dc9f9172fe31f0596f.jpg)
ポゲンドルフ錯視(方向の錯視)
直線の一部がさえぎられて見えないとき、線は直線ではなく、少しずれて見える。
以下の図で、左の画像を見ると、黒い線とつながっているのは青い線に見える。
しかし、右の画像を見るとわかる通り、黒い線は赤い線とつながっている。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Poggendorff_illusion.jpg)
ヘリング錯視(湾曲の錯視)
縦向きの二つの並行した線は、実際には直線であるが、背景の線によって凸レンズのように湾曲して見える。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Hering_illusion.jpg)
ヴント錯視(湾曲の錯視)
ヘリング錯視の逆バージョンで、縦向きの二つの直線が、背景の線によって凹レンズのように湾曲して見える。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Wundt_illusion.jpg)
カフェウォール錯視(方向の錯視)
白い四角形と黒い四角形を少しずらして交互に並べると、横方向の境界線が傾いて見える。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/ecc445ab866d6f1c9ed3df0b037a1272.jpg)
ジャストロー錯視(大きさの錯視)
扇型を二つ並べると、外側(A)よりも内側(B)のほうが大きく見える。
実際には、どちらも同じ大きさの扇型である。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Jastrow_illusion.jpg)
デルブーフ錯視(大きさの錯視)
左図のように、黒丸に大きい同心円を描くと、黒丸はより小さく見える。
右図のように、黒丸に小さい同心円を描くと、黒丸はより大きく見える。
実際には、どちらも同じ大きさの丸である。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/640px-Delboeuf_illusion.jpg)
エビングハウス錯視(大きさの錯視)
左図のように、中心(オレンジ色)の丸の周囲に大きい丸を配置すると、中心の丸はより小さく見える。
右図のように、中心(オレンジ色)の丸の周囲に小さい丸を配置すると、中心の丸はより大きく見える。
実際には、どちらも同じ大きさの丸である。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/640px-Mond-vergleich.jpg)
反転図形・多義図形による錯視
反転図形・多義図形も錯視とされることがある。
遠近などの反転に関わる錯視である。
以下は、反転図形・多義図形による錯視の例。
ネッカーの立方体(反転の錯視)
前面の線と後面の線がどちらも見えているため、どちらが前かわからない。(左図)
そのため、点線のような二つの見方ができるようになっている。(右二つ)
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Necker_cube.jpg)
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Cube1.png)
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Cube2.png)
マッハの本(反転の錯視)
遠近感が不明のため、本が手前に折れているのか、奥に折れているのかがわからない。
本が手前に折れている場合は、カバー(表紙)が見えており、読む人が奥にいることになる。
本が奥に折れている場合は、中身(文章)が見えており、読む人が手前にいることになる。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/SimpleIsomIllusion.jpg)
シュレーダーの階段(反転の錯視)
A面が手前、B面が奥だとすると、右下から左上に上がる階段のように見える。
A面が奥、B面が手前だとすると、階段が天井に逆さまについているかのように見える。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Schroeders_stairs.jpg)
不可能図形・矛盾図形・逆理図形による錯視
不可能図形・矛盾図形・逆理図形も錯視とされることがある。
2次元で描くことはできても、3次元の現実では不可能な図形による錯視である。
以下は、不可能図形・矛盾図形・逆理図形による錯視の例。
不可能の立方体(不可能の錯視)
反転図形の両方の要素が含まれているため、現実(3次元)には不可能である。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Impossible_cube.jpg)
エッシャーの『物見の塔』については、以下をご覧ください。
ペンローズの三角形(不可能の錯視)
立体の影になるところが立体の前面にもなっているため、現実(3次元)には不可能である。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Penrose-dreieck.jpg)
詳しい説明(解説)は、以下をご覧ください。
ペンローズの階段(不可能の錯視)
ずっと上り続ける(下り続ける)階段になっているため、現実(3次元)には不可能である。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Impossible_staircase.jpg)
エッシャーの『上昇と下降』については、以下をご覧ください。
エッシャーの滝(不可能の錯視)
ずっと流れ続ける水路になっているため、現実(3次元)には不可能である。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/27317650789_da9b227fb6_b.jpg)
ブリヴェット・悪魔のフォーク(不可能の錯視)
円柱が途中で角柱に変わっており、図(ず)と地(じ)にもずれが生じているため、現実(3次元)には不可能である。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Poiuyt.jpg)
色の錯視・明るさの錯視
色、明るさに関わる錯視である。
以下は、色・明るさの錯視の例。
ハーマングリッド・ヘルマン格子錯視(色・明るさの錯視)
格子状の図形で、白線の交差部分に黒い影が見える。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/HermannGrid.jpg)
チェッカーシャドウ錯視(色・明るさの錯視)
円柱の影になっていないタイル(A)は、より黒く見える。
円柱の影になっているタイル(B)は、より白く見える。
実際には、どちらも同じ色・明るさのタイルである。(右図)
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/800px-Checkershadow_double_med.jpg)
運動の錯視
静止画なのに動いて見える錯視である。
以下は、運動の錯視の例。
蛇の回転(運動の錯視)
蛇がトグロを巻いたような図形が勝手に動いているように見える。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/640px-Optical_Illusion_67183712.jpg)
そのほか
そのほかにも一般的に知られている錯視がある。
月の錯視
月が空高くあるときよりも、地平線や水平線に近くあるときのほうが大きく見える。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Moon_size_illusion.jpg)
スピニング・ダンサー(シルエット錯視)
動画のシルエット錯視。
シルエットを見ただけでは、右回りに回転しているのか、左回りに回転しているのかわからない。
軸足が右足だとすると、上から見下ろして左回り(反時計回り)に回転しているように見える。
軸足が左足だとすると、上から見下ろして右回り(時計回り)に回転しているように見える。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Spinning_Dancer.gif)
よりわかりやすい説明(動画)は、以下をご覧ください。
彼は行くのか?来るのか?(シルエット錯視)
静止画のシルエット錯視。
シルエットを見ただけでは、向こうに向かっているのか、こちらに近づいているのかがわからない。
![](https://it-counselor.net/wp-content/uploads/Is_he_going_or_coming__To_the_ball_park_he_wends_his_way_to_see_the_game_on__bloomer_day.__LCCN2008677281.jpg)
参考
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