フレーミング効果とは
心理的な枠組み(フレーム)の違いによって、意思決定に影響を及ぼすこと。
どこに焦点を当てて表現するかによって、与える印象が変わる。
わかりやすくいうと、フレーミング効果は「ものは言いよう」ということである。
ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキー(トヴェルスキー)によって、研究が進められた。
例えば、以下の2つの文章を読んで、どちらの案を選択するだろうか。
- A案「これまでに手術した100人の患者のうち、95人が成功しました」
- B案「これまでに手術した100人の患者のうち、5人が失敗しました」
どちらも手術の成功率としては同じだが、表現の違いによって多くの人がA案を選択する。
例えば、以下の2つの場合に、あなたはどうするだろうか。
- チケット紛失条件「10ドルの映画チケットを購入したあと、映画館に行ってからチケットを紛失したのに気づいたら、もう一度チケットを買うか」
- 現金紛失条件「映画館で10ドルの映画チケットを購入しようとしたら、10ドルの現金を紛失したのに気づいたら、もう一度チケットを買うか」
どちらも10ドルの損失だが、チケット紛失の場合は、もう一度チケットを購入するのはかなり損なように感じる。
逆に、10ドルの現金紛失の場合は、まだチケットを購入していないので、チケット紛失よりも損とは感じにくい。
これは、現実の損得勘定と心的会計(心理的会計)に違いがあるためである。
フレーミング効果は、認知バイアスによって生じる。
損失回避バイアス(損失回避の法則)
フレーミング効果は、損失回避バイアス(損失回避の法則)などの認知バイアスによって説明される。
人は、報酬よりも損失を回避しようとする心理的傾向がある。
そのため、手術が同じ成功率でも、生存率よりも死亡率を聞いたほうが、手術を避けようとする。
また、チケットを紛失した場合は、チケットを購入するのが2回目なので、損失だと感じやすい。
一方で、現金を紛失した場合は、はじめてチケットを購入するので、報酬だと感じやすい。
チケットの例については、トークン・エコノミー法について知っていると理解がしやすいかもしれない。
フレーミング効果の応用例
フレーミング効果は、マーケティングや広告、価格設定(プライシング)などで、ビジネスでもよく活用されている。
例えば、「満足度87%」と書くと、好評だと錯覚する。
一方で、「不満足13%」と書くと、悪い評判(損失)が気になってしまう。
また、アンカリング(アンカリング効果)によって、損失を演出することもできる。
例えば、値引きが一般的な商品サービスでは、定価のままでは損に感じるので購入しないが、定価より値引きすれば、よく売れる。
定価が基準値(アンカー)の役割になって、そことの差で判断されるためである。
フレーミング効果(認知バイアス)への対策
フレーミング効果に対処するために、企業などでは批判的思考(クリティカル・シンキング)が取り入れられている。
また、そもそも自身の認知バイアスの存在に気づくためには、自分の認知バイアスに気づくメタ認知が必要となる。
そのため、メタ認知を鍛えることなどを目的に、マインドフルネスを訓練することが広まっている。
参考
関連する心理学用語
認知心理学
行動経済学
認知バイアス
アンカリング(アンカリング効果)
自制心(セルフコントロール能力)
衝動性
意思決定
第三世代の認知行動療法
マインドフルネス
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