適応機制とは
欲求不満(フラストレーション)や葛藤に適応して、心の安定を得ようとする心理メカニズム。
適応機制は、無意識に行われることがあり、自覚することが難しい。
適応機制は、防衛機制とほぼ同じ意味で使われることもある。
以下では、適応機制の攻撃、逃避、防衛の3つについて、それぞれ見ていく。
攻撃(攻撃機制)
欲求不満(フラストレーション)の要因・障害に対して、立ち向かっていく攻撃を行うことがある。
例えば、子が親に叱られたら、親に反抗する。
例えば、部下が上司から評価されなかったら、上司に食ってっかかる。
これらの攻撃は、その表現方法が問題だとしても、自己を表現するために、ある程度適応的なことである。
子が親に反抗するのは、正常に発達している証しである。
部下が上司の評価に不満なら、上司に説明を求めるべきである。
人は、直接的な攻撃を避けるあまり、間接的な陰口や愚痴などで欲求不満(フラストレーション)だけを解消しようとしてしまう。
この場合、状況は改善しないため、欲求不満(フラストレーション)の爆発を繰り返しやすい。
また、欲求不満(フラストレーション)を爆発させることでしか、相手に不満を伝えられなくなってしまう。
一方で、欲求不満(フラストレーション)を爆発させるだけでは、相手と建設的なコミュニケーションがとれない。
そのため、アサーション・トレーニングなどで、適切な自己表現を訓練することなどが考えられる。
逃避(逃避機制)
欲求不満(フラストレーション)の要因・障害に対して、離れていく逃避を行うことがある。
例えば、子が親に反抗できないまま、遊びや趣味などに没頭する。
例えば、部下が上司に不満を伝えられないまま、メンタル不調をきたす。
これらの逃避は、その表現方法が問題だとしても、危険を避けるために、ある程度適応的なことである。
子供が何かに没頭するのは、決して悪いことばかりではない。
仕事でメンタル不調になったのは、体が休めとアラームを上げてくれたのである。
人は、逃避を悪いことのように捉え、心身を危険に晒してしまう。
その間、状況が変わらないのであれば、思い切って休んだり、他のことに逃げてしまうのも手だ。
一方で、休んでばかり、逃げてばかりで、「逃げ癖」ができてしまうのも問題である。
強大な獣から逃げてもいいが、別の獲物を狩らなければ、飢えてしまうわけである。
そのため、マインドフルネスなどで、不安や恐怖をアクセプトすることを訓練することなどが考えられる。
防衛(防衛機制)
欲求不満(フラストレーション)の要因・障害に対して、自己を守る防衛を行うことがある。
これは、防衛機制と呼ばれるものである。
防衛機制の代表的なものに、欲求を無意識の世界に押しやる抑圧がある。
例えば、子が親に反抗するかわりに、親から叱られたことを忘れる。
例えば、部下が上司に不満を表明するかわりに、上司への不満を忘れる。
これらの抑圧は、その表現方法が問題だとしても、自己を守るために、ある程度適応的なことである。
子供が嫌なことを忘れるのは、そうするしか逃げるすべがないからである。
仕事での不満を忘れるのは、我慢して仕事を続けていく必要があるからである。
人は、抑圧に気づかせるのが良いことだと捉え、他人に無理やり気づかせようとしてしまう。
この場合、気づくことはつらいことでもあるので、本人は抑圧に気づくことを拒否するだろう。
一方で、心は忘れても、身体は覚えているため、不安感だけ残ったり、身体に症状が出ることがある。
攻撃や逃避と違って、防衛は複雑な心的機能であるため、その対処法には多くのものが考えられる。
参考
関連する心理学用語
精神分析
闘争・逃走反応(fight-or-flight response)
アサーション・トレーニング
第三世代の認知行動療法
マインドフルネス
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