トークン・エコノミー法とは
目標となる行動を増やす(強化する)ための報酬などの刺激(強化子)に、数をためると実際の報酬と交換できるトークン(引換券)を用いる技法。(二次的強化)
トークン(シールなどの二次的強化子)をためると交換できる実際の報酬(お菓子などの一次的強化子)をバックアップ強化子と呼ぶ。
心理療法としては、行動療法(オペラント)・応用行動分析(ABA)に分類される。
トークン・エコノミー法とは逆に、減らしたい行動が行われた場合に、トークン(引換券)を減らすことをレスポンスコスト法という。
これは、負の弱化を用いた技法である。
マーケティング手法としては、ポイントカードやスタンプカードなどとしても用いられる。
例えば、単純に値引きするよりも、ポイントカードやスタンプカードなどのトークン(引換券)を用いて買い物をした直後に即時強化することで、顧客をリピーターに育成していくことができる。
学習・教育の手法としては、すぐに直接的なご褒美を与えず目標を達成してから与えることで、言われてからやるのではなく自分から行う自発的行動を増やすこと。
オムツ卒業のトイレトレーニングや夜尿症(おねしょ)では、自分からおしっこが出ると伝えてもらうこと(自発的行動)を増やすために用いられる。
この場合、シールなどを使って視覚化して行うことで、シール自体がご褒美になり、数がたまったらお菓子をあげることで、さらにシールの報酬効果(信用)が高まっていく。
最初はおしっこが出なくてもトイレに座っただけでシールを貼るなど、シェーピング法(シェイピング法)と組み合わせて用いると効果的。(徐々に厳しくしていく。)
報酬を与えるまでに必要な回数を徐々に増やすことで、部分強化効果(間欠強化効果)による学習の持続も期待できる。
シールなどのトークン(引換券)はすぐ与えることができるため、なかなか起こらない行動でもすぐ強化することができるメリットもある。(一般的に即時強化ほど効果が高い。)
もし子供がお漏らししたときに叱ってしまうと、お漏らしを隠して叱られるのを避けるようになったり(回避学習)、お漏らしを叱られたら逃げるようになったり(逃避学習)する。
以下は、海外で子供の教育に用いられるトークン・ボード。
トークン・エコノミー法は、子供の教育や顧客向けのマーケティングだけでなく、貨幣経済の基礎理論としても用いられる。
経済学では、通貨の代わり(代替貨幣)としてポイントや地域通貨などのトークンを用いることをトークン・エコノミー(トークン経済)と呼ぶ。
ビットコインなどの仮想通貨も、ブロックチェーンを用いたトークン・エコノミー(トークン経済)と言うことができる。
この場合、ポイントや仮想通貨などのトークン(引換券)がきちんと報酬(商品や通貨)と交換できることが信用形成のための重要な要素となる。
一方で、硬貨・紙幣なども元々は金(ゴールド)と交換可能なトークン(引換券)であった。(金本位制)
金本位制が崩壊したあとも、硬貨・紙幣の信用が維持されているのは、金(ゴールド)ではなく商品と交換できる(購入できる)経験によって、硬貨・紙幣の信用が強化・維持されているからだと考えることができる。
硬貨・紙幣は国によって偽造防止などの技術的な取り組みも必要となるが、ビットコインなどの仮想通貨はブロックチェーン技術によって偽造防止を図るのが特徴。
人類によって生み出された貨幣は、カタチのある空想の産物だと捉えることもできるだろう。
以下は、トークンを用いてお金の流れ(キャッシュフロー)について学べるキャッシュフロー・ゲーム。(ロバート・キヨサキ『金持ち父さん貧乏父さん』)
参考
関連する心理学用語
行動療法
応用行動分析(ABA)
コメント