シェーピング法(シェイピング法)とは
目標となる行動をスモールステップに分けて、簡単なものから教育・学習していく技法。
観察学習(モデリング)やプロンプトなど他の方法でも反応形成・行動形成(シェーピング)は可能だが、逐次的接近法(漸次的接近法)とほぼ同義で使われている。
心理療法としては、行動療法(オペラント)・応用行動分析(ABA)に分類される。
社会的行動の身についていない子供の不登校や引きこもり、ペットや動物の訓練などに用いられる。
マーケティング手法としては、トライアルやお試しなどのスモールステップに分けて申し込みや購入につなげること。
オペラント条件づけ・道具的条件づけであるため、自発的行動ののちに報酬となる強化子が必要となる。
強化子には、数をためると報酬と交換できるトークン(引換券)を与えるトークン・エコノミー法と組み合わせて用いられることもある。
例えば、不登校の場合は以下のように目標となる行動を細分化して進める。
- 朝の起床時間に寝床(布団)から出て朝日を浴びる
- 朝起きたら顔を洗う
- 朝起きたら顔を洗って服を着替える
- 朝起きたら身支度を整えて玄関で靴を履く
- 朝起きたら身支度を整えて玄関の外に出る
- 朝起きたらカバンを持って玄関の外に出る
- 朝起きたらカバンを持って近くの公園まで行く
- 朝起きたらカバンを持って図書館まで行く
- 朝起きたら学校の校門の前まで行く
- 朝起きたら学校に行って校門の中に入る
- 朝起きたら学校に行って校舎に入る
- 朝起きたら学校に行って保健室に入る
- 朝起きたら学校に行って教室の前まで行く
- 朝起きたら学校に行って教室の中に入る
- 朝起きたら学校に行って教室で授業を1時間だけ受ける
- 朝起きたら学校に行って教室で授業を午前中だけ受ける
- 朝起きたら学校に行って教室で授業を1日受ける
シェーピング法(シェイピング法)は、オペラント条件づけ・道具的条件づけであるため、過去に登校していた期間(強化履歴)が短く、登校習慣が身についていない子供や未学習の動物などの場合に効果的だと考えられる。
一方で、過去に登校していた期間(強化履歴)の長い子供や大人の場合には、登校や出社という行動自体には問題がなく、学校や職場などの環境(条件刺激)に対する不安や恐怖などの反応(条件反射)の方が問題となる。
この場合は、できることを増やすシェーピング法(シェイピング法)ではなく、不安や恐怖を徐々に消去していく暴露療法(エクスポージャー法)や系統的脱感作法を考慮する必要がある。
暴露療法(エクスポージャー法)や系統的脱感作法は、レスポンデント条件づけ・古典的条件づけであるため、報酬となる強化子は不要だが、その環境に暴露しても嫌なことが起こらないことを繰り返し体験(イメージ)する必要がある。
そのため、安全に十分配慮する必要があり、実際に行う場合は登校・出社時間を少しずらすなどの配慮も必要となる。
シェーピング法(シェイピング法)では、暴露療法(エクスポージャー法)や系統的脱感作法が同時に行われているとも言えるため、不安や恐怖を感じる環境に向かう行動のきっかけ・手がかりとして強化子を用いるのだと考えることもできる。
シェーピング法(シェイピング法)は、バラス・スキナーによって実験的に始められた。
スキナー箱の実験でオペラント条件づけ・道具的条件づけを成立させるには、自発的行動が偶然起こるまで待つ必要があるため時間がかかる。
そこで、段階的な条件づけを行って、徐々に目標とする行動に近づける反応形成(シェーピング)を行った。
レスポンデント条件づけ・古典的条件づけによって自動的に反応形成(シェーピング)が起こる自動反応形成(オートシェーピング)も発見されている。
以下の動画は、バラス・スキナーが反応形成(シェーピング)によってハトを回転させる様子。(英語音声、1:21)
新たな行動を形成するのに効果的であることがわかる。
参考
関連する心理学用語
行動療法
応用行動分析(ABA)
観察学習(モデリング)
プロンプト
学習履歴
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