レスポンデント条件づけ・古典的条件づけとは
反射的行動の起こらない刺激に対して、反射的行動の起こる刺激を受ける(対提示される)と、同じように反射的行動を起こす刺激の数が増える学習の手続き。
イワン・パブロフ(パヴロフ)によって研究が進んだことから、パブロフ型条件づけとも呼ぶ。
学習理論としては、刺激と刺激の結合によって成立する連合学習に分類される。
パブロフの犬の実験(パブロフ)
ロシアのイワン・パブロフ(パヴロフ)は、レスポンデント条件づけ・古典的条件づけについて、パブロフの犬(パヴロフの犬)の実験を行った。
犬にベルの音を聞かせながら餌を与えることを繰り返すと、餌を与えなくてもベルの音を鳴らすだけで犬がヨダレをたらすようになる。
この場合、反応(ヨダレ)を引き起こす刺激(餌+ベルの音)が増えたことになる。
以下の図は、パブロフの犬(パヴロフの犬)の実験の様子。
アルバート坊やの実験(ワトソン)
イワン・パブロフ(パヴロフ)ののち、行動主義(古典的行動主義)を提唱したアメリカのジョン・ワトソンも、レスポンデント条件づけ・古典的条件づけについて、アルバート坊やの実験を行った。
1歳に満たないアルバート坊やに白ネズミ(ラット)を見せて、背後で金属の棒を金づちで叩いて大きな音を出すことを繰り返すと、白ネズミ(ラット)を見ただけで泣き出すようになる。(恐怖条件づけ)
この場合、反応(恐怖)を引き起こす刺激(大きな音+白ネズミ)が増えたことになる。
無条件反射・条件反射(無条件刺激・条件刺激)と予報的信号
パブロフの犬(パヴロフの犬)の実験では、ベルの音(条件刺激)が餌(無条件刺激)の出現を予報する予報的信号となって働いている。
アルバート坊やの実験では、白ネズミ(条件刺激)が大きな音(無条件刺激)の出現を予報する予報的信号となって働いている。
無条件刺激に対して、学習によらず先天的に起こる反射的行動を無条件反射(無条件反応)と呼ぶ。
条件刺激に対して、学習によって後天的に起こる反射的行動を条件反射(条件反応)と呼ぶ。(学習によって、中性刺激が条件刺激に変化する。)
オペラント条件づけ・道具的条件づけとの違い
以下の動画は、古典的条件付けとオペラント条件付けの違いを説明するTED-Ed動画。(英語音声、日本語字幕、4:12)
レスポンデント条件づけ・古典的条件づけは、筋肉の動きや腺の分泌など末梢的な条件反射の学習で、刺激-反応の関係(S-R結合・S-R連合)だけでほぼ説明できる。(S-R理論)
それに対し、オペラント条件づけ・道具的条件づけは、自発的に行動する中枢的な内的過程(心や意識など)を考慮する必要が出てくる。
以下の表は、レスポンデント条件づけ・古典的条件づけとオペラント条件づけ・道具的条件づけの比較。
レスポンデントはレスポンス、オペラントはオペレーションと覚える。
条件づけ | 人物 | 実験 | 学習の流れ | 学習の結果 | 内的過程 |
---|---|---|---|---|---|
レスポンデント条件づけ 古典的条件づけ パブロフ型条件づけ | パブロフ ワトソン | パブロフの犬 アルバート坊や | 刺激に対して反応する反射的行動 (刺激→反応、受動的) | 反応する刺激が増える | なし (末梢的・不随意的) |
オペラント条件づけ 道具的条件づけ スキナー型条件づけ | ソーンダイク スキナー | 猫の問題箱 スキナー箱 | 自発的行動(反応)に対して受ける結果(刺激) (反応→刺激、能動的) | 刺激によって反応が増える | あり (中枢的・随意的) |
消去
無条件刺激(餌、大きな音)がない状態で条件刺激(ベルの音、白ネズミ)を与え続けると、徐々に条件反射が低減される。
この現象を消去という。(実際には消去というより、新たな学習による抑制である。)
消去したあとも、しばらく時間を空けると自発的回復が見られることがある。
心理療法として、不安障害(不安症)に対する暴露療法(エクスポージャー法)などに応用される。
分化
一方の条件刺激(ベルの音、白ネズミ)には無条件刺激(餌、大きな音)を与え、類似した条件刺激(鈴の音、コートやマスク)には無条件刺激を与えないように条件づけすると、類似した条件刺激には条件反射が起こらなくなる。
この現象を分化という。(識別できていない場合は分化は起こらない。)
般化(刺激般化)と般化勾配
レスポンデント条件づけ・古典的条件づけが行われた条件刺激(ベルの音、白ネズミ)に類似した条件刺激(鈴の音、コートやマスク)でも条件反射が起こる。
この現象を般化(刺激般化)という。(汎化ではなく般化と書くのが一般的。)
般化には、似た刺激ほど反応し、違いが大きくなるほど反応が弱まる般化勾配がある。
二次条件づけ(高次条件づけ)
学習した条件刺激を用いて、新たな条件づけを行うことも可能である。(この際、無条件刺激は不要となる。)
この現象を二次条件づけという。(三次条件づけ、四次条件づけと続けていくことができ、全体として高次条件づけとも呼ぶ。)
特殊なレスポンデント条件づけ・古典的条件づけ
たった一回の経験(試行)でも学習されてしまうガルシア効果・味覚嫌悪学習(味覚嫌悪条件づけ)がある。
オペラント条件づけ・道具的条件づけのように見えるものに自動反応形成(オートシェーピング)がある。
レスポンデント条件づけ・古典的条件づけ(恐怖条件づけ)によって発生して(発生要因)、オペラント条件づけ・道具的条件づけの負の強化(回避学習・逃避学習)で維持される(維持要因)ものに、不安障害(不安症)がある。
生体外の刺激(外受容感覚)ではなく、生体内の刺激(内受容感覚)によって起こるレスポンデント条件づけ・古典的条件づけに、内部感覚条件づけがある。
おまけ
レスポンデント条件づけ・古典的条件づけを用いれば、好感度の高い人物などを商品コマーシャルに利用することで、商品の好感度を引き上げることができる。
ちなみに、ジョン・ワトソンは後年広告業界に転身している。
参考
関連する心理学用語
連合学習
S-R結合(S-R連合)
S-R理論(S-R説)
恐怖条件づけ
不安障害(不安症)
コメント