対提示(対呈示)・条件づけとは
レスポンデント条件づけ・古典的条件づけにおいて、反射的行動の起こらない刺激に対して、反射的行動の起こる刺激を受ける(与える)こと。
一次条件づけでは、反射的行動の起こらない刺激(中性刺激)に対して、無条件刺激を対提示することで、条件反射(条件反応)を示すようになる。
条件づけによって、中性刺激は条件反射(条件反応)を示す条件刺激に変化する。
二次条件づけ(高次条件づけ)では、無条件刺激の代わりに、学習した条件刺激を対提示することで、条件反射(条件反応)を示すようになる。
レスポンデント条件づけ・古典的条件づけは、同時に提示するのではなく、一定の間隔を置いてから対提示した方が効果的である。
以下は、わかりやすいように一次条件づけを例に、代表的な条件づけについて説明する。
順行条件づけ
中性刺激=条件刺激(ベルの音など)のあとに無条件刺激(餌など)を提示することを順行条件づけと呼ぶ。
条件刺激(ベルの音など)は無条件刺激(餌など)の予報的信号となって働いている。
そのため、条件づけが効果的に働くためには、刺激提示の順序が大切で、準備反応ができるように少し間を空ける必要がある。
遅延条件づけ
順行条件づけの中でも、中性刺激=条件刺激(ベルの音など)を止めずに無条件刺激(餌など)を提示することを遅延条件づけと呼ぶ。
短い遅延条件づけが最も効果的な条件づけである。
痕跡条件づけ
順行条件づけの中でも、中性刺激=条件刺激(ベルの音など)を止めてから無条件刺激(餌など)を提示することを痕跡条件づけと呼ぶ。
遅延条件づけよりも効果が弱まる。
以下の図は、遅延条件づけと痕跡条件づけの違いを説明したもの。
CSが条件刺激(ベルの音など)、USが無条件刺激(餌など)を表し、横軸が時系列になっている。
2段目が遅延条件づけ(Delay conditioning)で、3段目が痕跡条件づけ(Trace conditioning)である。
同時条件づけ
中性刺激=条件刺激(ベルの音など)と同時に無条件刺激(餌など)を提示することを同時条件づけと呼ぶ。
短い遅延条件づけよりも効果が弱まる。
これは、同時に対提示されると、無条件刺激(餌など)に先に注意が向けられてしまうため、生体としては逆行条件づけと捉えられるためと考えられる。
逆行条件づけ
中性刺激=条件刺激(ベルの音など)のまえに無条件刺激(餌など)を提示することを逆行条件づけと呼ぶ。
短い順行条件づけや同時条件づけよりも効果が弱まる。
このことからも、条件刺激(ベルの音など)は無条件刺激(餌など)の予報的信号となって働いていることがわかる。
条件づけのしやすさ(恐怖条件づけ)
恐怖条件づけは、少ない回数の経験(試行)で学習される。
たった一回の経験(試行)でも学習されてしまうガルシア効果・味覚嫌悪学習(味覚嫌悪条件づけ)がある。
家庭や職場における条件づけ
遅延条件づけは、嫌なこと(ストレス)があったときに、その直前の刺激も嫌になる(ストレスになる)ということを表している。
そして、嫌なことが起こる直前の刺激を操作することは難しく、職場や家庭などで一番多く受ける刺激が嫌悪対象になりやすい。
職場でいつもストレスを感じていると、よくやり取りする上司の顔や声まで憎らしくなる。
家庭でいつもストレスを感じていると、同居するパートナーや子供の顔や声まで憎らしくなる。
この考え方を知るだけで、無意識に感じる罪悪感を外在化しやすくなる。
これが発展すると、嫌なことがあるたびに自分の呼吸や心臓の鼓動が憎らしくなり、過呼吸やパニック発作などにつながる。(内部感覚条件づけ)
間接化
反射的行動の起こる外的な刺激(無条件刺激や条件刺激)がなくても準備反応が行われることがある。(例えば、梅干しを想像しただけでヨダレが出る、思い出し笑い、トラウマのフラッシュバックなど。)
この現象を間接化という。
記憶や言語などの高次の心的能力が働いていると考えられる。
参考
関連する心理学用語
外在化
間接化
行動療法
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