センサリーモーター・サイコセラピー(SP)とは
PTSD(心的外傷後ストレス障害)や複雑性PTSDなどのトラウマケアに用いられる身体志向の心理療法です。
マインドフルネスを取り入れたハコミセラピーから発展しており、パット・オグデンによって開発されました。
ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)や愛着理論を背景に、認知療法および精神分析(精神力動)的心理療法を身体化したカウンセリングアプローチです。
認知的なトップダウンのアプローチだけでなく、身体的(ソマティック)なボトムアップのアプローチを統合し、身体感覚、情動、認知の3つのレベルを意識して行っていきます。
トラウマという言葉を生み出したピエール・ジャネの影響を受けており、統合能力を増大させることを目標としています。
身体感覚や行動、思考や感情などの自分の体験と他人の体験を区別する能力を個人化といいます。
マインドフルネスに今この瞬間の身体感覚(内受容感覚)に気づき、過去と予想される未来を区別する能力を現在化といいます。
この2つの能力が重なり合うと、より高い統合能力である現実化に向かいます。
トラウマを耐性領域(耐性の窓)を超えた自律神経系の調整不全であると広く捉えることで、PTSD(心的外傷後ストレス障害)だけでなく、複雑性PTSD・発達性トラウマ障害にも応用されています。
段階的な治療を取り入れており、セラピーは以下のような流れで行われます。
- リソースを見つける
- トラウマを統合する
- 日常生活で統合する
技法としては、トラッキングとボディリーディングが挙げられます。
トラッキングとは、瞬間ごとの身体感覚の変化を観察することです。
ボディリーディングとは、持続的な行動傾向を観察することです。
そして、身体感覚、情動、認知のレベルを意識しながら、観察したものをそのまま言語化していきます。
このとき、社会的関与・社会的交流(social engagement)によって、自律神経系が活性化される効果もあらわれます。
周りを見渡してみてください。
今ここに存在することを、足の裏やお尻で感じてみます。
今、何を考えていますか?
考えていることを何度も繰り返してみてください。
考えていることを繰り返すと、何か気持ちに変化はありますか?
それとも、身体に変化はありますか?
その変化は、身体のどこに感じますか?
身体感覚を意識することで、気持ちに変化はあるでしょうか?
センサリーモーター・サイコセラピー(SP)は、来談者中心療法(クライエント中心療法)と似ている部分があり、これまで説明が難しかった共感(共感的理解)を身体側面から説明しているといえます。
来談者中心療法(クライエント中心療法)では、伝え返しの技法など言葉による気づきにスポットライトが当たることが多いですが、センサリーモーター・サイコセラピー(SP)では、トラッキングやボディリーディングの技法など身体側面への気づきが重視されています。
来談者中心療法(クライエント中心療法)では、共感のための感情に関する質問が多いですが、センサリーモーター・サイコセラピー(SP)では、身体感覚に関する質問が重視されます。
参考
関連する心理学用語
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
闘争・逃走反応(fight-or-flight response)
S-O-R理論
マインドフルネス
来談者中心療法(クライエント中心療法)
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