満足遅延耐性とは
将来得られるより大きな報酬(遅延報酬)のために、目の前の小さな報酬(即時報酬)を我慢して遅らせることができること。
薬物依存、ニコチン依存、アルコール依存、ギャンブル依存など依存症の場合、目の前の報酬を選択しやすい(満足遅延耐性が低い)傾向があることがわかっている。
IQなどの学力で測れない非認知能力で、自制心(セルフコントロール能力)の一種である。(満足遅延耐性が低いことを衝動性とも表現する。)
満足遅延耐性は、時間割引率(時間選好率)とほぼ同じことを言っており、行動経済学として研究が進められている。
満足遅延耐性は、先延ばしの心理である現在バイアス(現在志向バイアス)に抵抗する力とも言える。
満足遅延耐性は、子供などの発達レベルを測るのにも用いられる。
例えば、子供がオモチャの貸し借りや遊具のかわりばんこができるか、会話の順番を待てるかなどを見る。
学習・教育の手法としては、すぐに報酬を与える(即時強化)だけでなく、遅くなっても報酬を得られる経験(遅延強化)をさせること。
例えば、何度も約束を破られる経験をすると、我慢しても無駄だと学習して満足遅延耐性が低くなることが考えられる。
満足遅延耐性を高めるためには、面倒なことをすぐやったり、ご褒美をできるだけ引き伸ばしたりできる精神的な余裕や、すぐに報酬を得なくても暮らしていける経済的な余裕などが必要となる。
精神的な余裕については、休息やリラクセーションなどでも一時的に回復するが、マインドフルネスを訓練するのも効果的である。
経済的な余裕については、マシュマロ実験(マシュマロ・テスト)の再現実験(追試)によって明らかにされている。
対処として、環境を整えようと考えると行動療法的だが、自制心・セルフコントロール能力を高めようと考えると第三世代の認知行動療法(マインドフルネス)が適していると考えられる。
自制心(セルフコントロール能力)と衝動性の関係を説明するのに用いられるメタファー(例え話)として、天使と悪魔がある。
天使と悪魔は、善と悪ではなく、長期的視点と短期的視点と考えることで、矛盾や葛藤を抱えやすくなる。
マシュマロ実験(マシュマロ・テスト)
子供の満足遅延耐性が、大人になってからの成果に長期的な好影響を及ぼすことを示した実験。
4歳の子供に1つのマシュマロを提示し、15分後に戻ってくるまで一人で食べずに我慢できれば、もう1つマシュマロをあげることを約束し、我慢できるかを確認する。
我慢して2つ目のマシュマロを手にした子供は、満足遅延耐性の高い子供ということになる。
その後の年単位の追跡調査の結果、満足遅延耐性の高い子供は、学業成績などが高い傾向が続くことがわかった。
ただし、その後行われた再現実験では、マシュマロを我慢できたこと(満足遅延耐性)の影響は限定的で、家庭の経済的背景の影響の方が大きいことが示されている。
以下は、マシュマロ実験(マシュマロ・テスト)を行ったスタンフォード大学のウォルター・ミシェルの著作。
マシュマロ実験(マシュマロ・テスト)は、その後多くの書籍に引用された。
以下は、ベストセラーとなった『スタンフォードの自分を変える教室』。
参考
関連する心理学用語
行動分析学
第三世代の認知行動療法
マインドフルネス
行動経済学
自制心(セルフコントロール能力)
衝動性
非認知能力
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