双曲割引とは
時間割引率(時間選好率)が高いほど、報酬価値が急激に下がることを説明するモデル(グラフ)のこと。
多くの人は将来の報酬を現在の報酬より割り引いて考えているが、その割引率が低ければ将来の報酬まで我慢することができる。
以下の図のように、時間割引率(時間選好率)が高いほど、価値(縦軸)が下がりやすい。(縦軸が価値、横軸が遅延時間。)
遠い将来なら待てるが、近い将来なら待てない(すぐ欲しくなる)ことが言える。
これは、現在の自分が未来の自分を売り渡す行為に例えられる。(まるで現在の自分と未来の自分が分離した別のものであるかのように。)
また、目の前の報酬には手が伸びてしまうが、すぐ手に入らない(アクセス性が悪い)報酬は比較的我慢できることが言える。
例えば、つい漫画を読んでしまうのであれば漫画を段ボールに仕舞い込み、ついお菓子を食べてしまうのであればお菓子を買い置きしないなど、環境面を適切に設計することで衝動的な行動をコントロールすることができる。
ニコチン、アルコール、ギャンブルなどの依存症も同様で、依存対象から距離を離す(アクセスしにくくする)ことが対策になるが、現実にはどこでもすぐ手に入る(アクセス性が高い)ため、重度の依存症患者は施設に隔離することなどが必要となる。
最近では、カフェイン(コーヒーやエナジードリンクなど)や精製糖(チョコレートなどのお菓子)の依存性が問題視されており、その手に入りやすさ(アクセス性の高さ)から無自覚に依存してしまっている人も多い。(睡眠障害や質的栄養失調につながる。)
金融教育としては、給与天引きの財形貯蓄や自動預金・自動投資などで毎月自動的に貯蓄・積立することで、衝動的な消費・浪費からお金を退避させることが重要である。
対処として、環境を整えようと考えると行動療法的だが、自制心・セルフコントロール能力を高めようと考えると第三世代の認知行動療法(マインドフルネス)が適していると考えられる。
双曲割引は、現在バイアス(現在志向バイアス)や時間的非整合性(動学的不整合性)とほぼ同じことを説明している。
現在の自分(短期的視点)と未来の自分(長期的視点)の関係を説明するのに用いられるメタファー(例え話)として、天使と悪魔がある。
天使と悪魔は、善と悪ではなく、長期的視点と短期的視点と考えることで、矛盾や葛藤を抱えやすくなる。
参考
関連する心理学用語
行動分析学
マインドフルネス
第三世代の認知行動療法
行動経済学
自制心(セルフコントロール能力)
衝動性
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