時間割引率(時間選好率)とは
ある報酬の将来の価値(遅延報酬)が、現在の価値(即時報酬)よりどれだけ低く感じられるかを時間による割引率で考えること。また、その割引率のこと。
1年後にもらう1万円は、現在価値に換算すると1万円より低くなる。
多くの人は将来の報酬を現在の報酬より割り引いて考えているが、その割引率が低ければ将来の報酬まで我慢することができる。
時間割引率(時間選好率)が低い人は自制心(セルフコントロール能力)が高く、時間割引率(時間選好率)が高い人は衝動性が高いことになる。
時間割引率(時間選好率)は、満足遅延耐性とほぼ同じことを言っており、行動経済学として研究が進められている。
薬物依存、ニコチン依存、アルコール依存、ギャンブル依存など依存症の場合、目の前の報酬を選択しやすい(満足遅延耐性が低い)傾向があることがわかっている。
人には将来の報酬を現在の報酬より割り引いて考える傾向があるが、将来の損失は報酬ほど割り引いて考えられないことがわかっている。
1年後にもらう1万円はあまり嬉しくないが、1年後にあげる1万円はかなり損に感じる。(現在報酬>>将来報酬、現在損失>将来損失。)
こうした報酬と損失の時間割引率(時間選好率)における非対称性を、符号効果と呼ぶ。
時間割引率(時間選好率)を下げるためには、面倒なことをすぐやったり、ご褒美をできるだけ引き伸ばしたりできる精神的な余裕や、すぐに報酬を得なくても暮らしていける経済的な余裕などが必要となる。
精神的な余裕については、休息やリラクセーションなどでも一時的に回復するが、マインドフルネスを訓練するのも効果的である。
経済的な余裕については、マシュマロ実験(マシュマロ・テスト)の再現実験(追試)によって明らかにされている。
双曲割引
時間割引率(時間選好率)は、双曲割引モデルなどによって説明される。
以下の図のように、時間割引率(時間選好率)が高いほど、報酬価値が急激に下がりやすい。(縦軸が価値、横軸が遅延時間。)
遠い将来なら待てるが、近い将来なら待てない(すぐ欲しくなる)ことが言える。
これは、現在の自分が未来の自分を売り渡す行為に例えられる。(まるで現在の自分と未来の自分が分離した別のものであるかのように。)
また、目の前の報酬には手が伸びてしまうが、すぐ手に入らない(アクセス性が悪い)報酬は比較的我慢できることが言える。
例えば、つい漫画を読んでしまうのであれば漫画を段ボールに仕舞い込み、ついお菓子を食べてしまうのであればお菓子を買い置きしないなど、環境面を適切に設計することで衝動的な行動をコントロールすることができる。
金融教育としては、給与天引きの財形貯蓄や自動預金・自動投資などで毎月自動的に貯蓄・積立することで、衝動的な消費・浪費からお金を退避させることが重要である。
対処として、環境を整えようと考えると行動療法的だが、自制心・セルフコントロール能力を高めようと考えると第三世代の認知行動療法(マインドフルネス)が適していると考えられる。
双曲割引は、現在バイアス(現在志向バイアス)や時間的非整合性(動学的不整合性)とほぼ同じことを説明している。
現在の自分(短期的視点)と未来の自分(長期的視点)の関係を説明するのに用いられるメタファー(例え話)として、天使と悪魔がある。
天使と悪魔は、善と悪ではなく、長期的視点と短期的視点と考えることで、矛盾や葛藤を抱えやすくなる。
参考
関連する心理学用語
行動分析学
第三世代の認知行動療法
マインドフルネス
行動経済学
自制心(セルフコントロール能力)
衝動性
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