人間関係は最大のストレス源
人間関係は最大のストレス源だと言われます。
どんなに心の強い人でも、社会との関わりを絶ってしまうと孤独感に襲われます。
一方で、誰一人同じ人はいないのですから、人と人との違いに消耗してしまいます。
そして、人の違いを受け入れることができずに、相手を変えようとしてしまうと、ますますストレスがたまることになります。
なぜなら、人の中身は他人が変えることができないものだからです。
他人に働きかける自分を変える
ただ単に、相手を変えようとしても、大抵その努力は無駄に終わります。
なぜなら、相手の性格や中身は、そう簡単に変わるものではないからです。
一方で、相手に働きかける方法を変えることはできます。
これは、自分のやり方を変えることで、相手の反応を変えることにつながります。
つまり、自分が変わることで、相手を変えるということになります。
対人関係を扱う対人関係療法(IPT)
人間関係を扱う心理療法として、エビデンスのある対人関係療法(IPT)があります。
対人関係療法では、人の性格や中身ではなく、その役割にスポットライトを当てます。
相手をマインドコントロールのように変えようとして無駄な努力をするのではなく、相手に期待する役割のずれ(不一致)や、自分に期待される役割の変化、などとして捉えることで、コミュニケーションを変え、二人の関係を改善しようとするものです。
夫婦や事実婚などのパートナー関係の場合
例えば、配偶者(パートナー)が家計の一部を担っているが、実際には養ってもらうことを期待している場合があります。
これは、社会的な価値観の変化の流れがあり、どちらの価値観が正しいかと一概に言えるものではありません。
一方で、当事者間では、今は男女共働きで稼ぐべきだとか、はたまた家計や育児のためにどちらかが家に入るべきだとか、それぞれの価値観に縛られている場合があります。
あるいは、家事の負担比率、育児や子育てへの関与度合い、に不満を持っていることなどもあるでしょう。
これらはまさに、相手に期待する役割のずれ(不一致)だと言えます。
親と子供の親子関係の場合
例えば、親は子供を拘束し、干渉し、すべてを知ろうとするかもしれません。
一方で、思春期を迎えた子供は、自立に向けた親離れの練習を開始し、反抗期を迎えます。
過去には、子供は親に従うものだとされてきましたが、現在では変化してきています。
また、子供は周囲の友人の家庭と比較することで、その時代の変化を敏感に感じ取り、自分の親子関係と比較しています。
親もまた、自分が親に育てられた経験を元に、一部修正しながらも、子供を育てようと必死です。
これもまた、必然的に起こる相手に対する期待のずれ(不一致)だと言えるでしょう。
相手に対する期待のずれ(不一致)に対応する
相手に対する期待のずれ(不一致)に気づかないまま、いくら会話を進めてもうまくいきません。
大抵の場合、話し合いの努力は行き詰まり、コミュニケーションが減少してしまうでしょう。
その場合は、関係が完全に崩壊する前に、役割の認識を一致させるための再調整が必要になります。
そして、それには第三者の支援が重要となります。
なぜなら、関係が行き詰まっているのは、うまくいかないコミュニケーションを続けているからこそ起こっていることであり、その繰り返しに自分で気づいていれば、そもそも行き詰まることははなかったからです。
失業・退職・異動・転職・昇進などによって役割が変化した場合
例えば、失業や退職によって社会的な役割を失った場合、失業者などの新たな役割を受け入れる必要が生じます。
一方で、その役割を受け入れられないと、職探しに身が入らなかったり、家庭内での扱いの変化に苛立ちを覚えたり、友人に対する劣等感に苛まれたりすることになります。
冷静に考えると、自由な時間ができ、家族との時間を多く持つことができ、過去を振り返ることができ、これまでやりたかったことに挑戦しやすくなるのに、それに気づけないのです。
これは、失業や退職までいかなくても、部署異動や転職などによっても引き起こされます。
自分が希望して異動や転職をした場合でも、またたとえ昇進であったとしても、あらかじめ想像していた自分の役割と、実際に期待される役割との間に乖離があることがほとんどです。
この場合も、過去の役割のよかった点だけを思い出すのではなく、悪かった点、逆によくなった点を評価し、役割の変化を受け入れた上で、新たな役割に向けたスキル獲得が必要となります。
これらは自分に期待される役割の変化であり、人生の中で幾度となく繰り返されます。
結婚・離婚・出産・出生などによって役割が変化した場合
例えば、結婚は親からの独立を意味し、自分以外の家族も含めて家庭を支える役割に変化します。
逆に、離婚はそれらの役割がなくなるか、一部を維持しつつも、一人で、あるいは子供と生きていく役割に変化します。
どちらの場合も、自分の役割の変化よりも、相手への愛情や憎悪、子供に対する愛着や申し訳なさなどに意識が行ってしまい、気づかないうちに自分を疎かにしてしまっていることがあります。
また、出産や出生などによって親になった場合、家族が増えただけで自分には変化がないように感じるかもしれませんが、その役割には大きな変化が起こっています。
親に反抗してきた自分、親を喜ばせたかった自分、そんな自分とは別に、子供をいかに育てていくかを考える役割が与えられるのです。
親のようにできるだろうか。親を批判してきたくせに、自分はどうなんだ。誕生を祝ったあとに、突然襲ってくる不安・恐怖・責任感。それらに対応していく必要が生じます。
これも自分に期待される役割の変化であり、人生における大きなライフイベントと共に起こります。
自分に期待される役割の変化に対応する
自分に期待される役割の変化に気づかないまま、過去の自分の役割のことばかり懐かしんでいてはいけません。
そういった場合は、過去の役割のよかった点ばかりに目が行ってしまい、悪かった点がきちんと見れていないのです。
過去を懐かしむこと、過去の役割の喪失を悲しむことも大切なプロセスですが、その前に、冷静な目で過去の役割を振り返り、現在の役割と比較する必要があります。
そして、新たな役割に向けて、必要な行動を起こし、スキルを磨いていくのです。
人生にはライフサイクルがあり、役割の変化は必然的に起こります。
それに対して、人は前に進むしかないのです。
この場合も、冷静な目で振り返るための客観的な第三者による支援が重要になります。
昔を懐かしんでいたり、悲しみにくれていた方が、人は楽なのです。
そして、その落とし穴から抜け出すには、人の手助けが必要になります。
自分にはサポートが必要だということに気づく
このほかにも、亡くなった方との関係を人間関係と捉え、きちんと悲哀の感情を表現することが必要な場合、人間関係が欠如しており、引きこもりや不登校になっている場合などの問題領域があります。
これらの問題領域に対して、対人関係療法(IPT)では、カウンセラーと共に取り組んでいきます。
しかし、そのスタートは必ず自分で切る必要があります。
相談に来ていただけなければ、カウンセラーは手の出しようがないためです。
そして、最大の問題は、相談するのが遅れるということによって起こっています。
これまでの人間関係から、カウンセラーとの人間関係を持つことを恐れているのかもしれません。
もしくは、カウンセリングを受ける自分に対して屈辱感を感じるのかもしれません。
そして、その屈辱感を感じないように、カウンセリングを受けるようなやつは弱いやつだとレッテルを貼ることで、自分は大丈夫だと言い聞かせているのかもしれません。
ですが、そのようなときこそ、本当はカウンセリングを受けるときなのです。
なぜなら、それだけ対人関係に問題を抱えており、つらい感情を感じていて、それを隠そうとしていること自体が問題を起こしているからです。
そして、検索などでこのページにたどり着いたのも、カウンセリングを受けるべきだと薄々気づいているからだと思うのです。
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