時間的非整合性(動学的不整合性)とは
計画時に長期的な利益のための意思決定が行われても、短期的な利益と相反するため、実行時に計画と整合性のない行動をしてしまうこと。
徐々に計画から逸脱していくため、定期的に計画を見直すことも必要となる。(計画を立てなければ、いつも目先の利益で動いてしまう。)
薬物依存、ニコチン依存、アルコール依存、ギャンブル依存など依存症は、長期的な視点よりも短期的な視点が勝ってしまうために起こると言える。
教育・学習の手法としては、時間的非整合性に陥らないように、はじめに立てたルールを守り続けられる環境を整える。
例えば、育児・子育てであれば、方針としては甘いものはあげない、Youtubeを見せないと考えていても、泣き叫んで周りに迷惑がかかる状況などでは仕方なく与えてしまう。
すると、子供は泣き叫ぶと甘いものがもらえる、Youtubeが見れると学習してしまい、ますます泣き叫ぶようになる。
多くの人は、短期的な衝動に逆らおうとすると多くの気力(余力・エネルギー)を消費するため、長期的な計画のもと環境面を適切に設計することが必要な対策となる。
例えば、ダイエットをするなら、体重計を買い、お菓子を捨て、目に付くところに目標を掲げる。(外食も控える。)
仕事であれば、一定金額以上のお金の使い道(稟議決済)には計画との整合性を条件としたり、あとから計画の振り返り(効果検証)を行うことなどが考えられる。
気合や根性などの内面だけでなく、道具や環境などの「形から入る」ことにも意味があると言える。
金融教育としては、給与天引きの財形貯蓄や自動預金・自動投資などで毎月自動的に貯蓄・積立することで、衝動的な消費・浪費からお金を退避させることが重要である。
対処として、環境を整えようと考えると行動療法的だが、自制心・セルフコントロール能力を高めようと考えると第三世代の認知行動療法(マインドフルネス)が適していると考えられる。
時間的非整合性(動学的不整合性)は、現在バイアス(現在志向バイアス)や双曲割引とほぼ同じことを説明している。
天使と悪魔のメタファー
現在の自分(短期的視点)と未来の自分(長期的視点)の関係を説明するのに用いられるメタファー(例え話)として、天使と悪魔がある。
天使と悪魔は、善と悪ではなく、長期的視点と短期的視点と考えることで、矛盾や葛藤を抱えやすくなる。
ゲーム理論における動学的不整合性(時間的非整合性)とは
ここまで行動経済学(経済学)における時間的非整合性について主に説明してきたが、ゲーム理論における動学的不整合性についても、コミットメントの観点で研究が進められている。
例えば、政府がインフレターゲットなどの金融政策を発表すると、株式市場がそれを織り込むため実施する前から市場に影響を及ぼすことができる。
そのため、金融政策の実施タイミングでは、すでに効果が現れているために実施しない方向にバイアスが働くことになる。
ただし、コミットメントした政策を実際には実施しないと信用を失い、今後の発表(コミットメント)の効果が下がることになる。
参考
関連する心理学用語
行動分析学
第三世代の認知行動療法
マインドフルネス
行動経済学
自制心(セルフコントロール能力)
衝動性
ゲーム理論
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