心理的安全性

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心理的安全性とは

自分の言動に対して、拒絶されたり、罰せられたりする不安・恐怖のない安心感のある状態のこと。(物理的な安全ではなく、社会的な安全である。)

ここでなら何を言っても大丈夫だと思えることで、気兼ねなく自分のありのままの考えや感情を表現(自己開示)できるようになる。(表面上の仲良しではなく、意見し合える関係である。)

アメリカのエイミー・エドモンドソンが提唱し、Google社の取り組みから注目を集めた。

最高のチームに最も重要な要素は、最高の人材を集めることなどではなく、心理的安全性であるとされる。


職場などのチーム組織において、不安・恐怖のない状態であれば、リスクを取った言動(ストレスに向かう行動)が可能となるが、不安・恐怖のある状態では、みながリスクを取らなくなり、組織が硬直化していく。


学習性無力感(学習性無気力)と心理的安全性

心理的安全性に対する概念として、学習性無力感(学習性無気力)がある。

同じ職場で働くような逃げ場のない状況で、何を言っても拒絶されたり、罰せられたりすることで、学習性無力感(学習性無気力)に陥ることがある。

このとき、試行錯誤によって一時的に行動レパートリーが増える(頑張る)が、そのあと学習によって行動レパートリーは減少していく(頑張れなくなる)。

一時的に活動量が増加するため、職場では叱責などが多用されるが、マネジメント手法としては低次のやり方であり、結局は生産性(パフォーマンス)の低下につながる。(俗に言うパワハラである。)


心理的安全性では、コミュニケーションが活性化するだけでなく、試行錯誤レベルでは活動量が増えることで生産性(パフォーマンス)の向上につながり、洞察(見通し)レベルではイノベーションの創出につながるとも考えられ、高次なマネジメント手法である。

最近ではダイバーシティ(多様性)が叫ばれているが、心理的安全性は組織の多様性を受け入れる土壌にもなる。

うつ病PTSD(心的外傷後ストレス障害)と似た症状を示す学習性無力感(学習性無気力)を防止する意味では、人材面での持続可能性(サステナビリティ)に向けた取り組みとも言え、離職率の低下など社員のエンゲージメントの向上にもつながる。


単にルールを定めることだけでは実現できず、その人が拒絶されたり、罰せられたと感じると、それは心理的安全性がない状態となる。

例えば、パワハラをしている本人には自覚がないことが多く、マネジメントにはメタ認知的な能力が必要になる。(最近ではマインドフルネスなどが取り入れられている。)


心理的安全性は、職場以外の家庭などでも必要になるものだと考えられる。

この場合も、その人が拒絶されたり、罰せられたと感じると、それは心理的安全性がない状態となる。

例えば、毒親モラハラをしている本人には自覚がないことが多く、育児・子育てや夫婦関係にもメタ認知的な能力が必要になる。(最近ではマインドフルネスなどが広まっている。)


来談者中心療法(クライエント中心療法)と心理的安全性

以下の引用は、Google社による情報「チームの心理的安全性を高めるには」から抜粋したもの。

こうして見ると、心理的安全性を高めるために、カウンセリングコーチングとほぼ同じことをしていることがわかる。

特に以下の抜粋箇所は、カール・ロジャーズ来談者中心療法(クライエント中心療法における受容(無条件の肯定的配慮)・共感(共感的理解)・自己一致とほぼ対応しているようである。

積極的な姿勢を示す

  • 「今」を大切にし、目の前の会話に集中する(例: 会議中はノートパソコンを閉じる)
  • チームメンバーから学ぼうという意欲を持って質問をする
  • 自分の意見を述べる、対話的なコミュニケーションを心がける、傾聴の姿勢を示す
  • 積極的な姿勢を示すため、返答するときは言葉で返す(例: 「なるほど。詳しく説明してもらえますか?」)
  • 体の動きや仕草に注意する。話を聞くときは少し体を乗り出すようにするか、相手の方に顔を向ける
  • 会話の当事者として積極的に話を聞いていることを示すため、相手と目を合わせる

理解していることを示す

  • 互いの理解が一致していることを確認するため、相手の発言内容を要約する(例: 「あなたがおっしゃったのは…ということですね?」)。その後で、同意できる点、できない点を示し、グループ内で率直に意見を交わす
  • 話の内容を理解したことを言葉で示す(例: 「なるほど」「おっしゃることはわかります」)
  • 責めを負わせるような言い方(例: 「なぜそのようなことをしたのですか?」)はせず、解決策に焦点を当てる(例: 「この作業をよりスムーズに進めるためにできることを考えましょう」「次に備えた行動計画を立てるため、皆で協力しましょう」)
  • 気づかぬうちに否定的な表情(苦い顔や不愉快そうな顔)を浮かべていないか注意する
  • 会話中や会議では、話を聞いていることを示すためにうなずく

強情にならない範囲で自信や信念を持つ

  • チーム ディスカッションをコントロールする(例: チーム会議での雑談を認めない、意見の対立が個人間の対立に発展しないようにする)
  • チームメンバー全員が聴き取れるよう明瞭に発声する
  • チームをサポートする、チームを代表して行動する(例: チームの成果を上級役員に伝える、チームメンバーの功績を認める)
  • 自分の意見に対して、チームメンバーが別の意見がある場合、反論したり異論を唱えるようチームメンバーに促す
  • 自分の弱みを見せる。仕事や失敗に関する自分の個人的な考え方をチームメンバーに伝える
  • リスクを取るようチームメンバーに促し、自分の仕事でも実践してみせる
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/introduction/


以下は、Google社で実際に人材開発に関わった人物による心理的安全性に関する書籍。


以下は、心理的安全性を提唱したハーバード大学のエイミー・エドモンドソンの著作。


以下は、回避も逃避もできず、人の入れ替えもできない究極空間である宇宙における心理を描いた漫画「宇宙兄弟」。


参考


関連する心理学用語

自己開示

ストレスとトラウマ(心的外傷)

失感情症(アレキシサイミア)

離人症(離人症性障害)

学習性無力感(学習性無気力)

カマス理論

試行錯誤説

洞察(見通し)

ダイバーシティ(多様性)

持続可能性

パワハラ

毒親

モラハラ

メタ認知

マインドフルネス

ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)

来談者中心療法(クライエント中心療法)


記述には慎重を期しておりますが、万一誤りや誤解を与えるような内容がありましたら、下部のコメントからご連絡いただけると助かります。

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