スキーマとは
過去の経験をもとに構造化された認知的な枠組みであり、認知する際の設計図になるもの。
人は、多くの知識を一般化したスキーマを通して、世界を認知していることになる。
そのため、スキーマは、信念や価値観などになり、そこから認知の歪み、イラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)などが生じると考えられる。
スキーマに基づいて、認識したり、記憶したりされるため、スキーマと矛盾するような場合は、整合性を保つ働きが生じる。
ITにおけるデータベースのスキーマとは別のもの。
スキーマとシェマの違い
認知心理学ではスキーマ(schema)と言うが、発達心理学ではフランス語でシェマ(schema)と言うことが多い。
これは、認知心理学の観点でスキーマを研究したのがイギリスのフレデリック・バートレットだったのに対し、発達心理学の観点でシェマを研究したのがスイス(フランス語圏)のジャン・ピアジェだったためである。
認知心理学におけるスキーマ
以下の引用は、スキーマが働くことで、初めて意味のわかる文章になっている。(ブランスフォードとジョンソンの実験)
手順は実際、まったく単純である。まず、ものをいくつかの山に分ける。もちろん量が少なければ1つの山でも十分である。もし設備がないためにどこかよそへ行かなければならないのなら話は別だが、そうでなければ準備は整ったことになる。大切なことは一度にあまり多くやりすぎないことである。つまり、一度に多くやりすぎるよりも、むしろ少なすぎるくらいのほうがよい。このことの重要さはすぐにはわからないかもしれないが、もしこの注意を守らないとすぐにやっかいなことになるし、お金もかかることになる。最初、全手順は複雑に見えるかもしれない。しかし、すぐにそれは生活の一部となるであろう。将来この仕事の必要性がなくなることを予想するのは困難であり、けっして誰もそんな予言をしないであろう。手順が完了した後、材料は再びいくつかのグループに分けて整理される。それからそれらは、どこか適当な場所にしまわれる。この作業が終わったものは、もう一度使用され、再びこのサイクルが繰り返されることになる。めんどうなことだが、しかしこれは生活の一部なのである。
心理学 新版 (New Liberal Arts Selection)
この文章は、「洗濯」について書かれているが、それを知らずに読むと意味がよくわからないことになる。
そのほかにも、「洗濯」というタイトルがわからずに読んだ場合は、タイトルがわかった上で読んだ場合と比べて、文章を記憶することが難しいことがわかっている。
このように、スキーマは心の機能としてメリットのあるものだが、デメリットもある。
それが、認知の歪み、イラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)などと呼ばれるもので、人を苦しめるものである。
参考
関連する心理学用語
認知心理学
認知行動療法(CBT)
認知療法
スキーマ療法
認知の歪み
イラショナル・ビリーフ(非合理的な信念)
自動思考
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